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東京高等裁判所 昭和60年(行ケ)25号 判決 1985年8月07日

原告

平間豪彦

外一八名

右一九名訴訟代理人

細川律夫

井上豊治

金臺和夫

山野光雄

被告

埼玉県選挙管理委員会

右代表者委員長

藤倉芳久

右訴訟代理人

田島久嵩

外二名

主文

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  原告ら

1  昭和五九年一〇月一四日施行の埼玉県加須市長選挙の効力に関する審査申立てについて、被告が昭和六〇年一月二三日した裁決を取り消す。

2  右選挙は無効とする。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

原告らの請求を棄却する。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告らは、昭和五九年一〇月一四日施行の埼玉県加須市の市長選挙(以下「本件選挙」という。)の選挙人であつた。

2  本件選挙には、矢沢恒雄、小谷野正義及び篠崎将太郎の三名が立候補したが、加須市選挙管理委員会(以下「市選管」という。)は、矢沢が一万三六一二票、小谷野が七四九〇票、篠崎が七三九五票の有効投票を得たとして矢崎を当選人と定め、その旨を告示した。

3  しかし、本件選挙には後記のとおりの無効原因があるので、原告小関、同山中政夫、同川島、同田辺、同星野、同長谷川、同町田治雄は、昭和五九年一〇月二四日又は同月二六日市選管に対し、本件選挙は無効である旨の異議を申し出たところ、市選管は同年一一月一五日異議の申出を棄却する決定をしたので、更に原告田辺、同山中政夫、同松本、同川島、同小関、同星野、同長谷川、同町田治雄は、同月三〇日被告に対し審査の申立てをしたが、被告は昭和六〇年一月二三日右審査申立てを棄却する旨の裁決をした。

4  本件選挙には、次のような選挙の規定違反及び選挙の自由公正を著しく阻害する行為があつた。

(一) 本件選挙公報に掲載された矢沢候補の略歴には、同候補が「旧制不動岡中・日大卒」とされていたが、同候補は両校を卒業した事実はなく明らかに学歴詐称である。

同候補は、両校を卒業した事実がなかつたのであるから、右学歴の掲載は公職選挙法(以下「公選法」という。)二三五条による虚偽事項の公表を禁止した規定に違反したものである。

(二) 市選管は、矢沢候補から、本件選挙に際して、候補者略歴書及び選挙公報掲載文の提出を同時に受けており、この内容を照合確認すれば右学歴詐称の事実は発見できたはずである。

また、同候補は、昭和五五年一〇月一九日施行の加須市長選挙に際しても立候補しており、その際にも「昭和七年三月日本大学文学部別科心理学科修了」と記載のある候補者略歴書を市選管に提出していたから、市選管は、同候補が「日大卒」ではないことを熟知していたはずであり、これとの照合によつても右学歴詐称の事実は確認できたはずである。

(三) しかるに、市選管は、右点検確認を怠り、矢沢候補の学歴が虚偽であるにもかかわらず、選挙公報の発行にあたり事前に注意を与え修正を促がさず、同候補の虚偽の学歴をそのまま本件選挙公報に掲載した。

(四) 更に、選挙公報発行時において、選挙人から「矢沢候補の学歴に誤りがある」という指摘があつたのに対し、市選管は何らの修正措置を講ずることをしなかつたにもかかわらず、投票日前日の一〇月一三日同候補からの学歴訂正願い書を受理して(選挙公報掲載文の修正は告示日午後五時までとされている)その修正行為を正当化させた。

その上、市選管は、投票日の翌日になつて同候補に対し、右学歴詐称について遺憾の意を表する処置をとつた。

(五) 右のような矢沢候補の学歴詐称による選挙公報の掲載の誤り及びこれに関する市選管の処置は、選挙の規定に違反するものであり選挙の自由公正を著しく阻害する行為である。

5  選挙の結果に異動を及ぼす虞

以上の選挙の規定の違反は、選挙の結果に異動を及ぼす虞があつた場合に該当する。

(一) 昭和五八年の公選法の改正により、公営立会演説会が廃止されたため、公の機関である選挙管理委員会から配付される選挙公報は、選挙人にとつて候補者選択の唯一の判断資料となつているものである。学歴時代といわれるほどあらゆる分野で学歴が偏重される現代社会において、学歴を詐称しそれを利用して選挙を有利に導こうとした矢沢候補の不法不正な行為及びそれに対し市選管によつて適正な修正措置が講じられなかつたことによつて選挙人の審判の判断に重大な影響を与えたことは明らかである。

(二) 旧制不動岡中(現在の県立不動岡高校)は、加須市に存在し、同市内はもちろん埼玉県内においても県立浦和高校、同熊谷高校などと並ぶ名門校(畑和埼玉県知事の母校でもある)として知られている。

本件選挙は、保守三つどもえの接戦が予想されていたのであり、選挙公報しか現実的な選択判断基準のない選挙人にとつて、羽生実業高校卒と掲載された小谷野候補、学歴について掲載のない篠崎候補、旧制不動岡中・日大卒と掲載された矢沢候補の各学歴が選挙の結果に与えた影響は重大である。

6  結論

よつて、本件選挙は無効であり、原告らの主張を退けた原裁決は違法であり取消しを免れないから第一の一記載のとおりの判決を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1、2の事実は認める。

2  同3の事実のうち、本件選挙に無効原因があることを否認し、その余は認める。

3  同4の事実について

(一)のうち、本件選挙公報の矢沢候補の略歴に、原告ら主張のとおり掲載されていたことは認め、その余は知らない。

(二)のうち、市選管が本件選挙に際し、選挙公報掲載文のほかに、候補者略歴届の提出を受けていることは認めるが、それはあくまで報道関係用として参考のためであり、法的届出義務のある文書ではない。市選管には、右両書面を確認照合する権限も義務もない。原告らの主張する、学歴詐称の事実を発見出来たはずとの点は否認する。矢沢候補が昭和五五年一〇月一九日施行の加須市長選挙に立候補し、その際、市選管に候補者略歴届を提出した事実は認める。しかし、市選管が同候補が「日大卒」でないことを熟知していたとの事実は否認する。

(三)は争う。加須市選挙管理委員会は選挙公報掲載文の内容につき、補訂する権限も義務も有しないのであるから、その記載内容について候補者略歴届と照合調査する必要はなく、注意を与え、修正を促す等の措置を執ることを要しない。

(四)のうち、選挙公報配布後に市選管に対し、氏名不詳の者から同公報記載の矢沢候補の学歴に誤りがある旨電話及び口頭による申入れがあつたこと、投票日前日の一〇月一三日同候補からの訂正願書が提出されたことは認める。しかし、市選管は、公報規程所定の様式及び期間を守つていない右訂正願書を受理せず、これを不問に付したのである。

市選管が投票日の翌日同候補に対し、右学歴詐称について遺憾の意を表する処置を執つたことは否認する。市選管委員長穐山徳治が個人の資格で投票日翌日同候補に対し、掲載文の学歴の記載事項の誤り及び時期に遅れた不適式な修正申請をとがめ、今後の注意を喚起したものである。

(五)は否認する。市選管が矢沢候補の選挙公報掲載文を原文のまま選挙公報に掲載したことは、公選法、加須市選挙公報発行条例、加須市選挙公報発行規程に基づき、かつその規定のとおり選挙事務を管理執行したものであつて、何ら選挙執行手続上の規定違反に当たらない。

4  同5は争う。

三  被告の主張

1  加須市は、同市の議会の議員及び長の選挙(選挙の一部無効による再選挙を除く)について、公選法一七二条の二の規定に則り、選挙公報発行に関し加須市選挙公報発行条例(昭和五九年三月三〇日条例第五号、以下「公報条例」という。)を制定している。

公報条例二条ないし四条の規定によると、市選管は、市長の選挙について候補者の氏名、経歴、政見、写真等を掲載した選挙公報を選挙毎に一回発行しなければならないことになつており、また、候補者が選挙公報に氏名、経歴、政見、写真等の掲載を受けようとするときは、その掲載文を添えて市選管に文書で申請すべく、右申請を受けた市選管は、候補者の掲載文を原文のまま選挙公報に掲載しなければならない旨定められている。

2  公報条例が候補者の経歴、政見等を原文のまま選挙公報に掲載させようとした趣旨は、法一六九条二項の規定の趣旨と同様、選挙管理委員会に候補者の経歴、政見等の内容を審査検討して掲載の許否を決めさせては、究極に於て候補者の経歴、政見等の発表の自由を阻害ないしは阻害する虞れがあり、ひいては公選法一条の規定にいう公明且つ適正な選挙が行われなくなり、民主政治の健全な発達を妨げることとなるので、これを禁止するところにある。

したがつて、市選管は、候補者の申請した掲載文中に、仮に虚偽の事項に属するものがあつたとしても、その掲載を拒否し、あるいは掲載文を訂正する権限を有しないのはもちろん、拒否、訂正する必要も義務もないのである。

3  本件選挙に関し、矢沢候補は、自己の氏名、経歴、政見等を選挙公報に掲載してもらうべく、その掲載文を添えて市選管に申請をし、右掲載文を受領した市選管は右掲載文につき、公報条例及び加須市選挙公報発行規程(以下「公報規程」という。)所定の字数及び使用文字等表現上の制限に関する事項を審査したうえ、右掲載文を原文のまま選挙公報に掲載し発行したものである。

なお、右掲載文中の略歴欄に「旧制不動岡中・日大卒」と記載があつたので、選挙公報にも同様の記載が掲載されている。

4(一)  市選管が矢沢候補の申請した掲載文を原文のまま選挙公報に掲載したことは、以上のとおり公選法及び公報条例の規定に基づき、かつその規定のとおり選挙事務を管理執行したものであり、公選法二〇五条一項の選挙の規定違反に当たらない。

(二)  選挙公報に虚偽事項が掲載されたとしても、選挙管理委員会には前述のとおり補訂の権限も義務もないのであるから、選挙公報の記載事項に関して他から誤りを指摘され、委員会が対応処置を執らなかつたとしても、何ら管理執行手続に違反するものではない。

(三)  公選法二〇五条一項の選挙の規定に違反するとは、選挙管理の任にあたる機関の選挙の管理執行手続に関する規定違反を指すものである。本件のごとく、選挙公報に虚偽の事項が掲載されたかどうかということは、専ら当該候補者の個人的帰責事由となるかどうかにとどまり、選挙を無効とする事由に当たらない。

四  被告の主張に対する原告らの認否及び反論

1  被告の主張1は認める。同2の前段については、基本的には被告主張のような趣旨であることは認める。後段は否認する。同3のうち、市選管が矢沢候補の掲載文につき被告主張の事項の審査をしたことは知らないが、その余は認める。同4は争う。

2  公報条例四条一項は、市選管は選挙公報の掲載文を原文のまま選挙公報に掲載しなければならない旨規定しているが、これはいかなる場合でも候補者の提出した公報掲載文を原文のまま選挙公報に掲載しなければならないとするものではない。候補者の提出した掲載文の内容が本件のように明らかに事実に相違し、法令に違反するような場合は事前に注意を与え、その修正を促すべきものである。

けだし、右規定の趣旨は、市委員会に候補者の政見等の内容を審査検討して掲載の許否を決定させることは、候補者の政見等の発表の自由を侵害し又は侵害する虞があつて、候補者の選挙活動に対し不当な制限を加えるだけでなく、選挙人をして適確な選挙権の行使を誤らしめる虞があり、ひいては選挙の自由・公正を害する危険があるためである。

3  そうであれば、みだりにその内容を審査検討して掲載の許否を決することは許されるべきでないが、本件のように学歴詐称という市選管の熟知し、公選法二三五条に明らかに違反する事実について、その注意を与え真実の記載に修正を促すことは右規定の趣旨に何ら反するものでなく、かえつてその趣旨とする選挙人をして適確な選挙権の行使をさせ、選挙の自由・公正を確保するために必要なものである。

したがつて、市選管は矢沢候補に対し、公報掲載文の虚偽の学歴につき注意を与え修正を促すべきものであつたのである。

公選法及び公報条例の規定に基づき、かつその規定のとおり選挙管理事務を執行し、市選管には補訂の権限も義務もないとする被告の主張は、右規定の条理を無視した形式的なもので不当である。

4  矢沢候補の本件学歴詐称は、単に公選法二三五条の虚偽事項の公表にとどまらず、明らかな公序良俗違反行為というべきもので、市長候補者として一般通常人であるならば何人といえどもその公表を許すことのできない内容である。このような内容の選挙公報掲載文を原文のまま掲載することは、公報のもつ重要な意義・役割に鑑み前記公選法の趣旨にも反し、選挙の自由・公正を著しく阻害するものである。よつて、市選管は、矢沢候補の虚偽の学歴については、事前に注意を与え任意の修正を促すだけでなく、矢沢候補がそれに応じなかつたときは掲載を拒否すべきものであつたのである。

5  市選管は、公選法及び公報条例の規定どおり公報掲載文を原文のまま選挙公報に掲載したものと主張するが、一方では選挙人からの矢沢候補の学歴の誤りの指摘後、公選法及び公報条例に違反して矢沢候補の学歴訂正願いを受理して、その修正行為を正当化させているのである。この点に関し、市選管は受付印を押して受理していながら、被告は、受理していないという理解に苦しむ主張をしている。更には、市選管委員長穐山徳治が委員長の資格で投票日の翌日、矢沢候補に対し遺憾の意を表したことは同委員長自ら市議会において認めているところである。

6  以上のような矢沢候補の学歴を詐称した公報掲載文についての市選管の処置は、公報条例四条及び公選法一六九条二項の選挙の規定の趣旨に違反し、選挙の自由・公正を著しく阻害したものである。

第三  証拠<省略>

理由

一請求原因1(原告らが選挙人であつたこと)、2(市選管が矢沢を本件選挙の当選人と定めたこと)の事実及び3のうち本件選挙に無効原因があることを除くその余の事実(原告らからの異議の申出、審査の申立て、これに対する棄却の決定及び裁決)は、いずれも当事者間に争いがない。

また、加須市は、公選法一七二条の二の規定に則り、同市の市議会議員及び市長の選挙(選挙の一部無効による再選挙を除く)における選挙公報の発行に関し、公報条例を制定しており、同条例の二条ないし四条の規定によると、市選管は、市長の選挙について候補者の氏名、経歴、政見、写真等を掲載した選挙公報を選挙ごとに一回発行し、候補者が選挙公報に氏名、経歴、政見、写真等の掲載を受けようとするときは、その掲載文を添えて、市選管に文書で申請しなければならず、右申請を受けた市選管は、候補者の掲載文を原文のまま選挙公報に掲載(なお、<証拠>によると、同条例三条一項により定められた公報規程はその七条で、写真製版により印刷するものと定めていることが認められる。)する旨定められていること、矢沢候補は、本件選挙に際し、自己の氏名、経歴、政見等を選挙公報に掲載してもらうため、その掲載文を添えて市選管に提出したが、その略歴欄には「旧制不動岡中・日大卒」との記載があつたこと、市選管は、右掲載文を原文のまま選挙公報に掲載し発行したことは、当事者間に争いがない。

二原告らは、矢沢候補者の本件選挙公報に掲載された略歴中「旧制不動岡中・日大卒」との事項は、虚偽であり、市選管はこれを熟知し、あるいは同候補から提出された略歴書を照合すれば容易に知りえたはずであるのに、何らこれを補正させず、右虚偽の学歴をそのまま本件選挙公報に掲載したことは、選挙の規定に違反するものであり、選挙の自由公正を著しく阻害するものである旨主張する。

公選法二〇五条一項にいわゆる選挙無効の要件としての「選挙の規定に違反することがあるとき」とは、主として選挙管理の任にあたる機関が選挙の管理執行の手続に関する明文の規定に違反することがあるとき又は直接そのような明文の規定が存在しないが選挙の基本理念である選挙の自由公正の原則が著しく阻害されるときを指すものと解される。

ところで、公報条例において、前記のように候補者の経歴、政見等につき、候補者が提出した掲載文を原文のまま選挙公報に掲載するよう規定している趣旨は、民主主義社会においては、選挙は、住民が地方政治に参加し、これにその意見を反映させる重要な機会であり、手段であるから、候補者がその政見その他の主張を何ものからも干渉されることなく自由に選挙民に訴えることができるとともに、選挙民が候補者の政見その他の主張を正しく理解し、他からなんらの制約をも受けることなくその自由な意思によつて投票すべき候補者を選択することができるよう、選挙が自由かつ公正に行われることが肝要であるところ、市選管に候補者の経歴、政見等の内容を審査検討して掲載の許否を決することを認めては、市選管が候補者の政見その他の主張そのものに介入、干渉することになり、ひいては選挙の自由公正を害することになるので、これを禁じているものであつて、市選管において候補者から提出された選挙公報掲載文に記載される事実が真実であることを確認、保障することを本来の目的としているものではないものと解される。これを本件についてみると、矢沢候補の略歴中「旧制不動岡中・日大卒」とある部分が、仮に原告ら主張のとおり虚偽であるとしても(選挙公報にはできる限り正確な記載がなされることが選挙の公正を保つことになるとの見地から、掲載文の内容が虚偽であることが一見して明らかであるような場合、あるいは、市選管が原告ら主張のような経緯でこれを知つたような場合等において、市選管が当該候補者に対して一応注意を与えその任意の修正を促がすことが公報条例の規定に違反せず許されることがあるのは格別)、本件選挙公報の発行に際し、市選管が、矢沢候補の前記略歴の掲載を拒否し、これを訂正し、あるいはその誤りを修正するよう促がす権限を有しないのはもちろん、その義務(必要)もないものと解すべきである。

したがつて、矢沢候補の略歴中前記学歴事項が原告ら主張のとおり虚偽であつたとしても、市選管は、前記のとおり同候補者の提出した掲載文そのままを掲載したものであるから、選挙の管理執行手続に関する規定に違反するものということはできず、また、候補者の学歴は選挙人が候補者を選択する一つの参考資料にすぎないのが通常であるから、右虚偽事項の掲載された本件選挙公報の配付によつて、本件選挙の選挙人全般の自由な判断による投票が阻害されたともいえない。

なお、選挙公報に虚偽事項が掲載されていても、市選管において、それを補正することが許されない趣旨が、前記のように選挙の自由公正を保障するためのものであつて、決して候補者が当選を得る目的で選挙公報を悪用することを認めるものではないことに鑑みれば、虚偽事項掲載の程度が極めて著大、悪質であり、選挙全体の自由公正に重大な影響を及ぼす特別の事情が存する場合には、本件選挙の無効を来す事由となりうると解する余地があるとしても、原告ら主張の事情をもつてしては、到底右特別の事情があるということはできない。

三そうすると、原告らの本訴請求は、その余の点に対する判断をまつまでもなく失当であることが明らかであるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官舘 忠彦 裁判官新村正人 裁判官赤塚信雄)

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